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  • 2024/05/19

夢 -焔の懺悔-


ただひとつの窓から見える、
村を飲み燃え盛る焔をその瞳にうつしながら、
一人の少女が祈るように座していた。 

ああ、燃えていく。
火が、焔が、すべてを飲み込んでいく。
この焔は、罪の証、罰、なのかもしれない。


 
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*

  • 2012/07/30

夢 -序-

背中が熱い。

こんな日は、決まってあの夢を見る。
大切なあの人と、二度と会えなくなった、あの夜の。

焔にまかれながら、笑ったあの人。
ただ、私の未来を、自由を願って。
この背を、押してくれた。
私に……命をくれた。

終わりと、始まりの、夜。

 

*

  • 2012/06/03

季節の狭間にて

蒼空の下、春の風が深い夜色の髪を掠めゆく。
緑色帯び始めた桜木の下、不意に娘の肩が叩かれた。
視線動かさぬ彼女には、その手の主が誰であるのか解っている様であった。

「……何か用?」
「おいおい、つれねーな。せめてこっち向けよ」

告げながらその隣へと、どっかりと腰を下ろした彼の言葉を追うように、
緩やかに視線を向けた星色の瞳に映るのは、にかりと浮かべられた笑み。
その様を一瞥した後、言葉無く、彼女は再び前を見つめた。

次は、彼も何も言わなかった。

変わりに、彼女の膝で丸くなる星霊猫の頭を一撫でし、ゆっくりとその身体を後ろへと倒す。
薄く色付いた桜花と、淡い緑、その狭間から薄っすらと蒼が覗き見えた。
疎らに咲き芽吹く、季節の合間から覗く空は、仄か、遠く。
いつもよりも風の音が、近く耳を掠める……そんな気がした。

互いの間に落ちる、暫しの沈黙。
しかし、それは決して無ではなく。
穏やかに流れ行く時が、確かに其処にあった。

沈黙を破ったのは彼の方。

「……なぁリィ。何か見えたか」

問いかけに、言葉無く、彼女は頷きで返す。

「……そうか」

そう零して、その身体を起き上がらせた彼の目は、
彼女と同じくに、真っ直ぐに前へと向けられていた。
その瞳は、これからの季節を思わせるかのような、深緑の色を帯びている。

「まぁ、お前がそういうなら、今お前の眼には、見るべきものが映ってるんだろうよ。
 湿気た面してやがるなら、いつもの一発見舞ってやろうかとも思っていたんだが…必要無さそうだな」

へへっ、と、どこか少年染みた笑いを零し、彼は立ち上がる。

「まぁ、代わりと言っちゃ何だが……ほい」

彼女の正面へと回った彼が、告げながら差し出したのは、
小さな……そう、掌にすら満たない、小さな花束。
深い紫色の花弁を揺らす、菫の花。
道に咲く其れを、ただ束ねただけの、ささやかな其れ。

「お前の好きなあの花じゃないが、許せよ?
 でも、まぁ。路の脇で寄り添うように咲く此の花も、今のお前にゃ似合いだぜ?」

差し出された紫色の花を手にした彼女は、小さく笑い。

「くれると言うなら、有難く頂戴するわ。
 ……でもね、あまり似合わないことをしないで頂戴?
 明日にでも嵐が起きたなら、折角咲いた薄紅の花が、見る間に散ってしまうわ」
「おいおい、随分な言い草だな。まぁ、リィらしいっちゃらしいか」
「それはどうも。褒め言葉として受取っておくわ」

やんわりと緩められた星色の瞳を捉えた深緑の瞳が、満足気に弧を描く。
深緑が映した表情には、憂いの色は見られなかった。
その瞳が映してきた景色を、経た時を想い、
土色の髪を揺らした彼は、再び隣の娘と同じ景色を瞳に映す。
要らぬ心配だったか、と、心の裡で小さく独り言ちた彼の言葉は誰も拾わず。

季節の香りを乗せた風が、彼と彼女の間を軽やかに吹きぬけた。

吹き抜ける先は……そう、きっと……

紫煙消える夜

張り詰めたような夜の空気
窓から吹き込むのはきんと冷えた風
揺れたカーテン越しに
夜空が見え隠れする

その空へと立ち上る紫煙は 消えつつあった


窓の外から聞こえる微かな喧騒から逃れるように
静かに 娘は寝返りをうった

 

*

呼び名

再会を果たした数日後、
久しぶりに茶でも飲もうとエーデに呼び出されたとある喫茶店。
面と向かって席に着くのはかれこれ何年ぶりかしら。
そんなことをぼんやりと思っていると、彼が口を開く。

「なぁ、リィ。そう言えばお前、仲間には何て呼ばれてんだ?」
「……何よ、いきなり」
「良いじゃねえか、教えろよ」
「……そうね、アリスやメリアが多いけれど、アリアとか、リアと呼ぶ人もいるかしら。
 アリスティ、なんて呼んでくれる人もいれば……まぁ、そのまま名を呼ぶ人も少なくないわ」
「へぇ、随分名が増えたじゃねぇか。……けどまぁ、これなら俺の勝ちだな」
「…………は?」

この人はまたいきなり何を言い出すのか。

「ほら、俺の愛称が一番短いだろ。だから」
「意味がわからないわよ。
 本来の名から離れていると言う意味では、貴方の敗けではなくて?
 大体、呼び名に勝ち負けなんて………」
「いーんだよ、俺がそれで納得いってれば。
 うん、何か気分いいな。おい、リィ、今日は奢りだ!好きなだけ食っていいぞー」

上機嫌なエーデが、傍を通った店員に注文を投げ、
手元の紅茶を喉に流し込む。
紅茶の味もわからぬほどに砂糖を入れて飲み干す味覚も、
唐突に紡ぎ出す言の葉や、突拍子の無い思考回路も、
未だに理解しがたいけれど……
彼のそういうところはあの頃と変わっていなくて。
そんな部分が、懐かしく心地よくも感じるのは事実。

……ま、調子に乗るだけだから、本人には言ってあげないけれど。

小さく笑って、私も紅茶を飲み干した。
奢ってくれるのなら、甘えておくのが得策ね。
さて、何を食べようかしら?

開いたメニューに目を走らせる、午後のひととき。

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